好きなモノ、書きたいもの、見たいもの、舞台映画、役者とか

オリジナル、二次の小説 舞台、役者 すきなもの呟いて書きます

逃げ込んだのは鋼の世界 田宮良子とタッグを組んだ女

 砂漠というか、あれた土地だった、目の前の光景に、ここはどこだろうと思いながら歩き出した。
 田宮さん、ここどこだかわかると話しかける、すると頭の中に声が響いた、わからないと、ただ、世界をまたいでしまったのかもしれないと言われて、そうなのかと思い、頷くしかなかった。
 空腹なのか、頭の中に声が響く、少しと思ったが口にしなかったのは、素直に頷いたら鼠や石ころでも食べかねないからだ。
 ああ、自分は少しずつだが、人間でなくなっていくのだろろうかと思ってしまった。
 自分の中に寄生獣がいる、周りの人間に、そのことが知られたらどんなことになるか、怖かった。
 人間ではないからといって調べられて実験体とか、いや、殺されるかもしれない。
 怖くなった、すると田宮礼子が言ったのだ、逃げようと。
 でも、どこにと思ってしまった、海外に逃げたとしても警察に、いや日本の警察より怖い組織に見つかったら、CIAとか、どこかの秘密組織、いや、マフィアとか、悪人に掴まることだって有り得る。
 すると違う世界に行こうと言ったのだ。
 パラドックス、平行世界、映画やアニメにある、ある日、突然、異世界に転移って、考えて迷った。
 多分、一人なら怖くて駄目だったかもしれない、でも今は田宮さんがいる、人間じゃないけど自分の中にいる存在。
 今まで他の寄生獣に出会って殺されそうになったとき、彼女が助けてくれたのだ。
 だから、少し考えると言ったのだ、そして数日悩んで答えを出した、日本から、この世界から出て行こう。


 旅行鞄に最低限のモノを詰めて出発するはずだったのに、それができなかったのは寸前になって他の寄生獣に遭ったからだ。
 出会った瞬間。


 「おまえ、混じっているな」


 と言われて襲いかかってきたのだ。
 殺されると思ったとき、田宮さんが両手から出てきて相手の腕を切った、そして落とされた腕も細かく切った。


 慌てて逃げたが、その後、後藤は五体、体の中に寄生獣が五体いると言われて驚いた。
 元の人間は完全に食べ尽くされたようだ、気配を感じられなかった。
 だが、人間のふりをするために五体の寄生獣で一つの体を共有しているようだ。


 以前、田宮さんに聞いたことがある、あたしを食べないのかと。
 すると、最初に寄生したときに脳を食べていればと言ったので、この質問は、それ以来、聞くことはしなかった。


 でも、後藤に襲われた、その晩、風呂に入りながら言ってしまった。
 体を、脳みそを全部食べてもいいよと。
 田宮さんは答えなかった、いつもならすぐに答え、返事をくれるのに。


 「来たぞ」


 不意に頭の中に声が響いた。
 驚いて何と聞き返す、後藤だ。


 「死んだんじゃなかったの」
 「細胞が残っていたのかもしれない」
 その言葉に慌てて逃げようと思った。
 田宮さんは強い、弱くはない、だが、後藤は五人だ。
 さっきまで田宮さんに全部、自分を食べてもいいと言っていたのに、この変わり身というか、死を身近に感じ、殺されると思ったら怖くなった。
 自分もだが、田宮さんも殺されてしまう。
 後藤は容赦ないというか、冷酷な性格だ、田宮さんと戦っていたときの様子からもわかる、同じ寄生獣の仲間でも平気で殺そうとするのだから。


 世界をまたいで、知らない場所に行くということがどういうことなのかよくわからない。
 風呂場を爆発したと田宮さんが説明してくれた、急いでいたから素っ裸だ、タオルとか、パンツもない、すっぽんぽんだ。


 「ありがとうございます、マルコーさん」
 医者だという初老の男性に会わなかったら、今頃はと思ってしまう
 世の中には親切な人もいる、もし誰かが困っていたら自分も親切、助けてあげようと思った。
 食事だけでなく、服もくれた、といっても女性用のではなく、マルコーさんのワイシャツとズボンだ。
 普段からメンズもの、ズボンばかりだったから問題なしだ。
 マルコーさんと会ってから田宮さんとの会話は最低限にしておいたのは知られたくなかったからだ。
 それにここへ来てしばらくしてから田宮さんは、よく眠るようになった。
 数時間という事もあれば、半日、こんな事は今までなかった。
 もしかして後藤と戦ったとき、怪我でもしたのかと思った。
 だが、それはない、大丈夫、体力を少し使いすぎただけという。
 けれど、お願いされてしまった。
 この世界のことを知りたいので本を読むこと、マルコーさんと色々な、どんな事でもいいから、たくさん話して知識を蓄えておくようにと言われたのだ。
 マルコーさんは医者で家の中には本棚には医学書がたくさんあった、医学書なんて言葉が分かるかと不安だったが、数日、一週間もすると読めるようになった。
 英語、何語なのかわからないけど読めるようになった、だが、医学書だけではない料理の本。
 気になったのは○○術という本だ。
 錬金術というのは現実ではないと思っていたので驚きだった。
 必要になるかもしれないと真夜中、田宮さんから言われたときは驚いた。
 もしかして、この世界にも寄生獣がいてなんて思ったとき、後藤という名前が自分の口から自然に出てしまった。
 ここへ来るとき、風呂場を爆発させたと言った、だが、それは別の世界へ行くために扉を開けるためだ。
 後藤は生きている、いや、こちらへ来ているのかもしれないと思ったのだ。
 「田宮さん、お願いが」
 言いかけたとき、声が頭の中に響いた。
 「後藤は強くなっているかもしれない」
 その言葉に正直、頷く事、そうだねと返事をすることも、正直したくなかった。


 住まわせてもらって、食事まで美味しいご飯を食べさせてもらっているのだからできることはしようと思ったのだ。
 掃除と洗濯、あと、簡単な手伝いをするから少しの間で良いから、ここに置いて欲しいと頼むとマルコーさんは最後には頷いてくれた。
 もし家族や恋人とかいたら断られていただろう。
 最初に助けてくれたこともあるが、この人はいい人だと思った、だから強く頼み込めば助けてくれると思ったのだ。
 後藤が現れる気配もない、寝て起きて、本を読んで、食べて、以前の日本でも生活みたいで嬉しくなった。
 ずっと、こんな日が続けば良いのににと思ってしまった。


 だけど、その日、診療所を一人の男性が尋ねてきた。
 白い帽子、スーツを着た男性だ。
 一見、普通の男性だ、なのに。
 「ドクター、セントラルに来て欲しいんです」

 「私にまた作らせようというのか、賢者の石を」
 マルコーさんの顔は男に対する感情なのか、それとも別の、賢者の石に対してなのかどちらなのかわからない。
 だけど、はっきりと、これだけはわかる、嫌なのだ。
 ここにマルコー先生と頼ってくる患者もいる、行きたくないのだ。
 でも自分は他人だ、口を出せない。
 多分、この男性、先生が嫌だと言っても強引につれて行きそうな気がする、世間には人の話を聞かないというタイプの人間がいるが。
 多分、この男性はそうではないだろうかと思ってしまった。
 錬金術師だ、頭の中で田宮さんの声が、代わろうと声がした。


 「帰れ、話しの通じない男だ」
 田宮さんの声に白スーツの男もだが、マルコーさんも驚いた顔をした。
 「ティム・マルコーさんは仕事で多忙故、ここを離れてセントラルに行くつもりはない、それと賢者の石についてはそちらでなんとかしろと言っているのだ」
 「あなた、誰です」
 白スーツの男が伺うように尋ねたが、自己紹介しても忘れるだろう、おまえのような人間はと言われて笑った。
 「随分な言われようだ」
 ドアを指さすと言葉を続けた、帰れと言いたいのだろう。


 田宮さん、このとき、あたしは声をかけた。
 頭の中に音が響いたのだ、大きくはない、でも、はっきりと聞き取れた、それは足音かもしれないが。
 「後藤だな」
 それは今、一番聞きたくない名前だった。