好きなモノ、書きたいもの、見たいもの、舞台映画、役者とか

オリジナル、二次の小説 舞台、役者 すきなもの呟いて書きます

禪院直毘人と楽巌寺嘉伸、「帳を無駄に広げた者がいる」夜蛾はげんこつを落とす

 禪院直毘人(ぜんいんなおびとは)禪院家26代目当主はである、酒が好きでいつも飲んでいる、仕事の最中であってもだ、普通なら魔よりから白い目で見られて、陰口など叩かれても不思議はないのだが、それがないのは、この男の強さかもしれない。
 もし何か言われたとしても、この男は相手を敵とみなして潰すだろう、それがわかっているから表立って逆らうものはいないのだ。
 力が全てだと彼は思っていた、それで現在の自分がある、ここまで登ってきたのだ、だから後悔など(あるわけない)。
 その日、直毘人は珍しく街に出ていた、
 呪霊退治である、わざわざ自分が赴く必要はなかった、なのに自らが出たのは報酬が良かったからだ、金と酒は生きていく上で不可欠だ、少なくとも自分にとっては。
 この仕事は最初、五条家にという話だった、ところが、禪院家の御当主にと言われたのだ、声をかけてきたのは呪詛師だ。
 何故、自分にと思った、相手は自分も詳しいことは知らないという、頼まれただけだと、正直、怪しいと思った、だが、目の前の男が自分に何かしようと思ってもできるわけがない、相手もそれを熟知しているようだ、伝えると逃げるようにその場を去っていく。
 仕事は思いのほか、早く簡単に終わった、何故、こんな仕事を自分にと思ったぐらいだ。


 足が止まったのは自分の目が見たものに驚いたからだ、ほんの数メートル先に、その女は立っていた、顔がはっきりと見えたわけではない、だが、立ち姿に似ていると思った。
 このまま家に帰ろうと思った、だが、足が向かってしまうのを止められない。
 女は買い物袋を持っているのでゆっくりとした足取りだ、すれ違いざまに顔を見ればいい、そうすれば納得できると思った。
 追い越して顔を見るだけだ、それなのに声をかけてしまった。
 「さんっ」
 呼んでしまった、その瞬間、しまったと思った、だが、自分の呼びかけに、はいと返事をして相手が振り返ったのだ。
 そっくりだ、顔、容姿、慌てたように毘人は首を振った。
 「ああ、その、間違えて、人違いで、すまない」 
 女は不思議そうな顔で毘人を見た。 
 (そっくりだ、まるで)
 言葉が出てこない、その瞬間、美夜と呼ぶ声に毘人の体が硬直した、いつの間にと思った、楽巌寺嘉伸(がくがんじよしのぶ)がいた。
 女が学長と呼び、老人の隣に立つ、その姿に目眩を、いや、悪夢だと思った、この男が、どうしてと思ってしまう。 
 老人がこちらを見た。
 「おお、禪院家の、珍しいのう、こんなところで」
 あのときと同じだと思ってしまう、忘れたはずなのに、昔、遠い過去のことなのに、自分と楽巌寺と女と三人、それが今。


 その夜、屋敷に戻った直毘人は酒を飲むことを忘れた、いや、眠ることさえ忘れて一晩中、まんじりともしないやるを過ごした。




 夜蛾の言葉を三人は黙ったまま聞いていた、だが我慢できなかったのか、いつもとは違う雰囲気に耐えきれなかったのか、先生と声をあげたのは五条悟だ、だが、それは無視、スルーされた。
 「いいか、怒っているわけではないぞ、私は」
 三人は首を振りたくなった、いや、怒っているだろうと思いながらも反論したい気持ちを抑えた。
 「補助監督だけなら問題は大きくはならなかった、だがパンダと木桜美夜が、消えた」
 ぽつりと呟くような言葉、落ち込んでいるのは明かだ。
 「先生、補助監督達は無事だったんでしょう」
 傑の言葉に夜蛾は頷いた、だが、二人が戻って来ないとぽつりと呟いた、その様子に三人はどういうことですと不思議そうな表情になった。 
 「帳の中で何があったのか分からない、いいか、今回、あの二人は現場からは離れた場所にいた、わかるか」
 視線が痛い、三人は顔を背けたくなったが、それができず、ただ俯いた。
 「帳を無駄に広げた者がいる」
 それはこいつです、二人が指さしたのは五条悟だ。
 「いいか、パンダも大事、だが、学長がご立腹だ」
 夜蛾は白髪の青年を睨んだ。
 「悟、ご立腹という言葉の意味が分かるか」
 「勿論です、先生」
 と差汁は頷いた、だが、そうかという返事の代わりに思い切り、頭の上に拳骨を落とされた。
 二人を助けに行きますと声をあげたのは夏油傑だ。
 「僕たち三人なら大丈夫です、安心して任せてください」
 だが、返事はない。
 「そうしたいところだ、だが」
 「何かあったんですか」
 呪詛師が消えたと夜蛾の言葉に三人は互いに顔を見合わせた。
 話が見えないというか、予想外の方にいきそうだ。 
 金さえもらえれば何でもやるという人間だ、その言葉に三人は最低、馬鹿、愚か者だと頭の中で呟いた。


 


 「ここ、どこだろう」
 日本でないことは明らかだ、木造の家もあるが、石造りのような家も多く、まるで外国の町並みに紛れ込んでしまったような感じがする。
 「うーん、とりあえずだな」
 「何、パンダくん」
 「腹ごしらえしよう」
 自分の隣でぼそりと呟くパンダがあるきだすと、慌てて女はその後を追いかけた。


 人の多い通りを歩くと皆が振り返る、あれっ、何、キメラ、なんて動物とひそひそ声で囁く。
 白と黒の、まるで熊のような生物はセントラルの街では見たことがないからだ 
 注目を集めたのも無理はない、だが、女とパンダは聞こえないふりをして歩き続けた。