朝から急がし……
雨が少し、小ぶりだったけど歯医者に行ってきた。
寒さのせいなのか膝が、がくがくだったけど、歯医者はマメに行かないと。
口の中って自分では見れないし、何か会っても自分では治せない、治療できないからね。
治療が終わって時間も早かったので、朝マックでソーセージマフィンのセット。
ホットコーヒーしたわ。
今日は夕方に今描いている小説の最終話をUP。
10話ぐらいまでと思っていたけど、だらだらと書く長編は自分には無理無のよ。
第一部、完という形で今回終わらせて、次の展開、時間の経過を早くして数話で終わらせて次の新作を書くつもりなのよ。
7 浮気夫の知らないところで 第一部 完結
その日、夕食のあと、正志は「近いうちに」と切り出した。
「少し家を空ける。海外へ行くんだ」
正志の言葉に、春奈は頷いた。
「準備するものはありますか?」
「着替えくらいだから、大丈夫だ」
「私が準備しましょうか?」
「自分でやるよ」
正志はそう言って笑った。
「分かりました。海外って、遠いんですか?」
「韓国だよ」
正志の言葉に春奈は頷いた。
「気をつけてください。治安の悪いところだってありますから」
観光なら、それほど心配はしなかったかもしれない。
だが、取材となれば話は別だ。
春奈の表情が少し真剣になる。
「夜は電話する。何もなければいいが。春奈さん、一人だとやはり心配だ」
「分かりました」春菜が頷いた。
「戸締まりには気をつけて。最近は物騒だからな」
「はい。正志さんも、気をつけてくださいね」
「私だ。無事に着いたよ」
取材初日、正志はホテルの部屋から春奈に連絡した。
「良かったです。取材、気をつけてくださいね」
ほっとしたような春奈の声がかえってきた。
「ああ、ありがとう。そうだ、シリアルバー、うまかった。手作りだろう?」
「はい。小腹が空いたときにと思って」
「助かったよ」
正志は、テーブルの上に置いた保存袋を見た。
出掛けるとき、春奈が持たせてくれたものだ。
以前の自分なら、駅や空港で適当に買っていただろう。
そんなことを考えて、正志は小さく笑った。
一人で暮らしていたときとは、少し違う。
そんなことを、改めて感じていた。
仕事帰り、四条は本屋に寄った、
もしかして、また、会えるのではないかと期待している自分がいた。
文芸誌の棚を見る。
以前、正志が立っていた場所だ、今日なら会えるかもしれない。
そんな期待を抱いていた。
店から出てきた男性の姿に四条は驚いた。
声をかけるつもりだった。
だが、一人ではない、隣に女性がいた。
女性が頭を下げている。
「明日、原稿を持っていきます」
「すまないね、時間だけは」
「分かっています」
途切れがちに会話が聞こえてきた。
仕事関係の女性だろうか。
女性が去っていくと正志は再び店の中に戻った。
思わず自分も店内に入る。
棚に向かって手を伸ばし、本を手にして、すぐレジに向かう。
「すみません」
レジの女性に声をかけている。
「取り寄せは少し時間が……」
女は少し離れたところから、その姿を見ていた。
けれど、正志は店員と話をしている。
「……どうしよう」
大学時代なら、何も考えずに挨拶できたかもしれない。
声をかけて、迷惑ではないだろうか。
そんなことを考えているうちに、正志がレジを離れた。
帰ろう、店を出ようとした、その時だ。
「四条さん?」
呼ばれたことに、すぐには気づかなかった。
振り返ると、正志がこちらを見ていた。
「気をつけて。暗いから」
そう言って、正志は歩いていく。
向こうから声をかけてくれたことに驚いた。
いや、嬉しかった。
自分の名前を覚えていてくれた。
もしかしたら、ここ数日、姿を見かけなかったのは樹剤だったのかもしれない。
取材で遠方に出掛けていたのかもしれない。
正志は数冊の本を抱えていた。
その夜、祐一のことを正志は考えていた。
以前、友人から聞いた話が頭に残っている。
女と一緒にいた、仲が良さそうだった。
あのときは、仕事関係の女性ではないかと思って、深くは考えなかった。
今、祐一は海外赴任中だ。
仕事で女性と一緒にいることくらいある。
そう考えていた。
だが――。
本当に、それだけか。
春奈は何も知らない。
もし、友人の見た女性が祐一の浮気相手だったら。
そう考えた瞬間、正志は嫌な気持ちになった。
息子だから、信じたいと思う気持ちがある。
だが、春奈を裏切っているのだとしたら。
父親として、見過ごすわけにはいかない。
それに祐一の母親のことを思い出すと、絶対にしていない。
浮気を……
断定できないと正志は思った。
突然、スマホの着信に正志は驚いた。
こんな時間に、名前を確認して驚いた。
由紀恵、別れた妻だ、連絡してくることなんて珍しい。
メールの内容を見て正志の顔が曇った。
「どうしたんだ」
「こんな時間、ごめんなさい。話したいことがあるの。祐一のことなんだけど」
「今かい」
「一人じゃないの?」
「今、祐一の妻、春奈さんと暮らしているんだが」
少しの無言の後、外で会えないという返事だ。
その言葉に正志は嫌な予感がした。
久しぶりに会った元妻の顔を見て、正志は少し驚いた。
「仕事中だったんだろう。疲れた顔をしている」
正志の言葉に、由紀恵は笑った。
「そう見える?」
「相変わらずか?」
「ええ。今でもバリバリ仕事してるわよ。実はね、身の回りのことをしてくれる人がいるの」
「恋人……いや、結婚したのか?」
「違うわ。女性よ」
由紀恵は少し間を置いた。
「あのね、正志」
「なんだ。怖いな」
「同人作家をしている人なの。仕事で知り合って、そのまま一緒に暮らすようになってね。食事や掃除、家のことも色々してくれるの」
「パートナー、ということか?」
「そうね。そう言った方が近いかもしれないわ」
正志はすぐには言葉が出なかった。
だが、やがて静かに笑った。
「由紀恵。君が仕事に打ち込めるのは、その女性のおかげか」
由紀恵は頷いた。
「そうね。おかげで仕事に集中できるわ」
そして、由紀恵の表情が変わった。
「祐一のことなんだけど……浮気をしている」
「……何?」
正志の顔から笑みが消えた。
由紀恵は、まるで何かを確信しているようだった。
「以前、あなたから写真を見せてもらったでしょう。春奈さんの顔は知っているわ」
話を聞いているうちに、正志の表情が変わっていった。最後には無言になった。
「時間は?」
由紀恵の話を聞いて、正志は確信した。
女性は春奈ではない。
その時間なら、春奈は書店でパートをしているはずだ。
「仕事関係の女性じゃないのか?」
正志が尋ねると、由紀恵は首を横に振った。
「最初はそう思ったわ。でも……距離感が違ったのよ」
「女の勘か」
「こんな言い方したくないけど、あなたが見ても、何かおかしいと思うはずよ」
その言い方が気になった。
由紀恵が女だから、そう感じたわけではない。
男の自分が見ても、何か引っかかるということなのだろう。
正志は、すぐには答えることができなかった。
「あいつは、今、海外出張だ」
由紀恵は驚いた。
「どれくらい、長いのかしら」
「数日ではない。でなければ同居の話を出さないだろう」
由紀恵は無言になった。
「いいかしら、こんな事、言いたくないけど、春奈さんには黙っていた方がいいわ」
「どういうことだ」
「浮気がばれても、妻を言いくるめようとするかもしれない」
「謝れば許してもらえるってことか」
「春奈さんはバイトなんでしょう。一人で生活できるのかって、不安にさせるのよ」
正志は顔を曇らせた。
春奈が働いていることを知っていても、祐一にとっては、妻は自分に頼って生きている存在なのかもしれない。
そう考えると、正志は腹立たしさを覚えた。
由紀恵と別れた後、正志は考えた。
海外へ行くと伝えたときも、春奈は自分のことを心配してくれた。
食事を作り、出掛けるときには持たせるものまで用意してくれる。
帰れば、明かりがついている。
それが、今では当たり前になりつつあった。
春奈は祐一の妻だ。
その妻を自分の父親の家に預けて、祐一は今は海外だ。
「……あいつは、何を考えているんだ」
正志は小さく呟いた。
息子を信じたい気持ちはある。
だが、もし本当に浮気をしているのなら、春奈に知られないまま済ませるわけにはいかない。
由紀恵の言葉が頭に残っていた。
『別れたら生活できなくなるぞって言うかもしれない』
正志は眉を寄せた。
春奈は、そんなことを言われたらどうするだろう。
自分一人では生活できないと思って、祐一の言葉を受け入れてしまうのだろうか。
そう考えたとき、正志の中に一つの思いが浮かんだ。
――それだけは、させたくない。
春奈が自分の人生を諦めるようなことだけは、させてはいけない。
気になるのは由紀恵の言葉だ。
浮気の事は春奈に今は言わない方がいい。
それは自分でもわかった、だが、それだけではない。
「これはね。想像だけど、浮気は以前からだと思うの」
「どういうことだ」
「今じゃなくて前から、結婚したときから」
馬鹿なことを、言いかけて正志は言葉を飲み込んだ。
「これは想像よ、あたしの」
由紀恵の性格から想像だけで口にするとは思えなかった。
妻に隠れて浮気している、軽い発言ではない。
正志の胸は重くなっていった。
そして同時に、ひとつだけ、はっきりしていることがあった。
春奈を、このまま一人にしてはいけない。
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