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オリジナル、二次の小説 舞台、役者 すきなもの呟いて書きます

佐伯を訪ねてきた男の言い分 警告

佐伯さんですね、名前を呼ばれて振り返ったが、相手の顔を見ても誰だったが思い出せない、どちら様ですかと尋ねたのは当然だろう。
 スーツ姿の男性は見た目は会社帰りのサラリーマンといった感じだ、だが、らしくないなと思ったのは感のようなものかもしれない。
 にっこりと笑いながら初対面ですと言った相手は背を向けて歩き出した、まるで佐伯が付いてくるだろうと確信している様子だ。


 道路を横切り、男は公園の中に入っていくと池の前で初めて立ち止まり振り返った、そして、はっきりと言った。
 「人魚なんていませんよ」
 佐伯は思わず聞き返すと、改めて男の顔をじっと見た。
 「自分たちと少し違うというだけで、興味を持たれたようですが、見なかった事にしてくれませんか」
 相手の声は静かで淡々と話す様子を見ているうち、佐伯の胸の中には好奇心が膨らみ、いや、興味が湧いてきた。
 「あんた、何を知っているんだ」
 「彼はね、病気です、治療の為に、こちらへ来ているんです」
 「病気、だと」
 「公になると面倒なことになるんです、あなたの知り合いは警察に連れて行かれたようですが」
 どうして知っている、いや、この男が何かしたのか、すると、その疑問を察したのか、相手は首を振った。
 「話し合いでできるものならそれでよしです、でもそれが通じない相手もいるんです」
 佐伯の顔が何か言いたげに不可解な表情になった。
 「俺にあの家の周りをうろつくなということか」
 佐伯は考え込むように相手の顔を見た、脅しや冗談なら馬鹿馬鹿しいと一笑できる。
 自分には記者としてのプライドがあるのだから、ネタを見つければ、それを調べて記事にしたいという欲望もある、だが、佐伯が何か言いかけたとき。
 男は佐伯さんと名前を呼ぶと笑いかけた、その表情に佐伯は薄ら寒いモノを感じた。
 これは警告ですよと言われた気がしたのだ。 




 「た、大変だよ、ミズさん」
 声をかけられてた男は、どうしましたと表情を変えた。
 「ミサちゃんが連れて行かれたんだよ、いきなりやってきたあいつらに、しかも、皆、顔を隠してなくて」
 「ショウは、彼もですか」
 「いいや、ミサちゃんだけなんだよ、水から出ようとして」
 「すぐに行きます」
 男は佐伯に軽く頭を下げた。


 抗生物質を処方されたからと病院から帰ってきた弟の英二に言われたとき、涼子は対して深く考えていなかった。
 仕事は水族館の勤務ということもあり、それまでも手荒れだけでなく水に触れる部分がかぶれたりする事があったからだ、ところが、今回だけは違っていた、いつもなら数週間、一ヶ月もすれば綺麗に治る腕の湿疹は次第に広がってく、それだけではない、最初の頃は赤黒かった色が、黒ずみ、次第に青や緑に、まるでたとえるなら魚の鱗のようになっていく頃には普通ではないと気づいた。
 病院には行きたくないんだと言い出したとき、これは普通ではないと涼子は気づいた、だが、どうすればいいのかわからない。
 だが、異変は、それだけではなかった。


 「最近、お風呂が長くなったよね」
 以前は鴉の行水かと思うくらい風呂に入る時間は短かったのに、一時間は当たり前になった。
 「湯に浸かっていると、いい気分なんだ、まるで魚になったみたいで」
 そういって笑う弟の顔を見て、涼子はほっとした。
 最初は何かの病気かと思ったのだ、だが、仕事を休むこともない、食欲だってある、あの鱗のような皮膚だって、痛みや痒みもないと最近では本人も気にしていないのだ。
 主婦の皮膚湿疹みたいなものかもしれないよ、水の水質調整の為に薬とか使うからねと言われて涼子は、そうかも知れないと思うようになった。


 それは日曜日、庭にビニールプールを出して水に浸かっている英二の姿を見たとき、その光景に涼子は驚いた、夏でもないのに、それに外は肌寒いくらいだ、いったいどうして、それに髪の色、肌の色が。
 それにプールの中には見慣れないものが浮かんでいた。
 確かめようとしてみようとしたが何故か目をそらしてしまった。
 見てはいけない気がしたからだ。
 弟を医者に見せるべきだろうかと迷ったとき、また、おかしなことが起きた、だが、それは弟にではなかった。


 それから数日後、一人の男が尋ねてきた。