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オリジナル、二次の小説 舞台、役者 すきなもの呟いて書きます

新しい生活の始まり、親の後悔、勘違いする男 3

 夫のことは妻である自分に任せて欲しいと言われてしまうと二人は頷くしかなかった。
 息子はどんな生活を送っているのだろうかと気になったか、別荘にいって数日もたたないうちに手紙を送ってくるとは正直、思わなかった。


 「旦那様、これを」
 数日後、執事から大事な話があると言われて父親はご子息の近状を知らされた。
 手渡された書類に目を通した父親はほっとした、書かれていることが事実なら申し分ない、心配する必要はないと安堵した。
 今更だが、息子には貴族としての心構えをしっかりと教えておくべきだった、だが後悔しても襲い。
 息子は好きな女と一緒に暮らせるということで頭が、いや、何も見えていないのだろう。
 しかし、これからだ。


 父親が自分の生活を心配して屋敷の使用人達を送ってくれた、嬉しいことだ、やはり自分は愛されている。
 正妻のジョゼフィーナとは白い結婚なので子供を作ることはない、だが、いずれはと考えた。
 跡目を継ぐのは自分だ、彼女との間に子供を作ればいずれはと考えていた。
 愛人との間子供は作らないという約束だった、だが自分は若い、それに夫、跡継ぎなのだ。
 そう思っていた、ところが。
 「我々はジョゼフィーナのご命令で」
 執事は、そう言って深々と頭を下げたのだ。
 使用人達を手配したのは妻だと知ってロアンは驚いた、だが、別れて暮らしているとはいえ自分たちは夫婦なのだ。
 そして、あることに気づいた、もしかして彼女は自分を振り向かせようとしているのかしれない。
 白い結婚を平然とした顔と態度で承知したのも強がっていたのかもと思った。
 見かけによらず可愛いところがあるじゃないかと思ってしまった。
 もしかすると夫に先立たれて寂しい思いをしているのかもしれない。
 少し優しくしてあげればよかったかと今更のように思ったが、今の自分は恋人との生活を楽しみたい。
 落ち着いたら一度、実家に両親の顔をてこよう、ついでに妻にも会ってと、そんなことを考える。


 「これをお飲みください」
 メイドから水と粉薬を渡されてロリアは怪訝そうな表情になった。
 一瞬、毒ではないかと思ったのだ。
 貴族と平民の娘の恋物語では正妻が毒を飲ませて、愛人を殺す物語がある。
 いや、現実でも珍しくはない。
 自分の不安が顔に出たのだろう、メイドには避妊薬ですと答えた。
 「あなた様に子供ができれば跡継ぎ問題が起こり、それが醜聞になりかねません」
 「子供、そんなつもりは」 
 メイドは言葉を続けた。
 「あなた方、二人だけならいいんです、今、ジョゼフィーナ様は子爵家の建て直しの為に奔走しています、ですが、あなたに子供もができたら、ロアン殿は跡継ぎにしたいと思うでしょう」
 そんなことはないと言いかけた言葉を彼女は飲み込んだ、ロアンのことだ、絶対にないとはいえない。
 以前、街でデートしていたとき、高級なレストランに自分を連れて入ろうとしたことがあった。
 だが、平民の女が貴族の出入りする場所に足を踏み入れるなど、決して許されない。
 だが、自分がいれば大丈夫だとロアンは譲らなかったのだ、レストランの支配人は表情を強ばらせた。
 貴族の子息が気まぐれを起こし、平民と連れだってやってきたと思ったのだろう、案内されたのは個室だ。
 運ばれてきた料理を前にしてロアンは上機嫌だったが、自分はというと帰りたい気持ちになり、料理の味もわからなかった。
 しばらくして、母親が自分とロアンが仲良くしていることを知ったとき、子供、妊娠だけは気をつけてと何度も繰り返し、言い聞かせてきたことを思い出した。
 噂になったら近所からどんな目で見られるかわからないと必死な顔だった。
 幸せになれるのだろうか、このとき初めて女は不安を覚えた。