好きなモノ、書きたいもの、見たいもの、舞台映画、役者とか

オリジナル、二次の小説 舞台、役者 すきなもの呟いて書きます

湖で Lerne eine ausländische Frau kennen 3

 自分は寝ていた、目を開けて天井を見上げようとしたけど薄暗いことに驚いた。
 風呂に入って明日の準備をとしなければと思った、だが、思い出した、休みなのだと。
 体を起こそうとしたときだ。


 「起きたんだね、心配したよ」
 近づいてくる足音と男の声に、思わずそちらを見た。
 「気分はどうだい、クリスティーナ」
 すぐには返事ができなかった。
 そして、思い出した、自分はゲームattractionの会場に来たのだと。
 だが、眠っていたなど気づかなかった、どれくらい時間がたっただろうか、帰らなければと思った。
 「足を見せてくれるかい、手当はしたんだが心配だ」
 言われるまで気づかず、シーツを引っ張ると足首に包帯が巻かれていた。
 膝をつき屈み込むようにして男が手を伸ばす、触れたのは白い手袋をはめた手だ。
 「痛みはないようだね、安心したよ」
 気遣うような声に慌てたように返事をする。
 「だ、大丈夫です」
 「もう少し、寝たほうがいい」
 男の言葉に驚いた、それよりも家に帰らなければと思った、だが言葉を口にするよりも先に眠気を、いやだるさを感じてしまった。
 男が立ち上がり、顔を近づけてきた、鼻から上を隠す白い仮面、そこから覗く二つの目から逃げるように顔をそらしてしまった。
 すると、慌てたように男が呟いた、すまないと。
 沈黙は長くは続かなかった。
 「おやすみ」


 眠ったかい、呼びかけても返事はないことにほっとしながら男は両手を伸ばし、ゆっくりと女の体を抱き上げた。
 部屋の中が少しずつ、暗くなる、それと同時に空気の匂いが変わり、自分と女の体を包み込んでいく。
 男は囁くように呼びかけた。  
 帰ろう、と。



 その日は特別だった、気まぐれといってもよかったかもしれない。
 見せ物小屋を抜け出して一人で散歩するのは珍しくはなかった、だが、この日に限って特別だった、夜遅くではない、昼間なのだ。
 人の気配もない、薄暗い森の中は昼間といえど君が悪いのか人気はない。
 だが、しばらく行くと湖があることに気づいたのは数日前のことだ。
  
 もうすぐ湖に着く、だが、あと少しいうところで男の足が止まったのは気配を感じたからだ。
 見つからないように木の陰に隠れて様子を伺おうとすると聞こえてきたのは水音だ。
 動物だろうか、だが、踏みだそうとした足が止まり慌てて隠れた。
 視界に現れたのは女だ、青いドレスが濡れている、ドレスのまま湖に入ったのか。
 二、三歩、歩き出した女が立ち止まり、大きなくしゃみをした。
 ドレスだけではない、髪、全身ずぶ濡れだ。
 このままでは風邪をひいてしまう、そう思ったとき、女がこちらに顔を向けた。
 もしかして、気づいたのか。
 立ち去ったほうがいいかもしれない、急いで、だが、目が離せない。


 「誰か、いる、の」


 問いかけるような声に私は決心した。
 怖がらせてはいけない不安にさせないように私は両手を上げて声をかけながら姿を見せた。


 「ハンカチを落としてしまったの」
 大事なものだから濡れるのも構わずに水の中に入って取ってきたのだという、だが、思ったより湖は深かったらしい。
 家を出て見せ物小屋、旅での暮らしで火をおこすのは慣れていた。
 本当は帰って着替えるのが一番いいのだろうが家は遠いという。
 このとき、私は自分が仮面をつけていることを忘れていた。
 それくらい、話に夢中になっていたのだ。
 「旅をしているのかい」
 「以前はね、今はパリの宿にいるの」
 男は不思議そうに尋ねた、喜んでいるようには見えなかったからだ。
 「親しい友達、知り合いもいないし、父は裕福っていうほどじゃないから、だからいずれは地下に住もうかなって考えているの」
 やめた方がいいと私は首を降った、家のない貧しい人間が洞窟や地下に住むのは決して驚くことではない、だが。
 腕に覚えのある男ならなんてかなるだろうが、父と娘というのは。
 「女、綺麗な女性にはお勧めしない、危ないからね」
 それ自分のことと女は不思議そうに聞いた後、笑い出した、自覚がないのだろうか。
 黒い髪と目は決して珍しくはない、だが、顔立ちは明らかにフランス人やジプシーとは違う、異国人だとわかる。
 「お父さんは」
 「宿で寝てる」
 男は、おやと思った、声が少し沈んだように感じたのは気のせいだろうか。
 「それにしても遅いわね」 
 女の言葉と周りを見る渡船に、もしかして待ち合わせでもしているのかいと尋ねるとそうなのよと返事がかえってきた。
 恋人だろうか、そうなら悪い事をと思ったが、同時に来ないで思ってしまう自分がいた
 「たぶん来ないと思うわ、以前もだったし、でも今回はどうして持って言われて、貴族なのよ」
 はあっと、ため息をつく彼女は立ち上がった。
 「帰るわ、父のことも気になるし、ありがとう」
 「宿まで送らせてくれないか、ドレスは完全に乾いた訳じゃないし」
 「いいの、でも迷惑じゃ」
 もう少し話がしたいんだ、遠慮がちにいうと女が頷いた。
 「あ、あたしも楽しくて」
 「本当に」
 男は腕を差し出すと、どうぞと声をかけた、すると女は不思議そうな顔をした。
 「腕を組むって、こと、フランスでは」
 女が緊張したようにおずおずと腕を絡めてきたので、これには男自身が緊張してしまった。
 だが、歩き出したとき、男の声が聞こえてきた。


 「ク、クリスイティーナ、す、すまないっ」