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オリジナル、二次の小説 舞台、役者 すきなもの呟いて書きます

Original Phantom of the Opera 始まりはゲームだった 1

 オペラ座の怪人好きだったよね、友人からのメールに気づいたのは真夜中だった。
 遅いと思ったが、すぐにメールを返すと今から少しチャット、スカイプではなせないと返事がきた。
 海外の舞台は、休演だ、そのせいかオリジナルの舞台が小劇場でいろいろと上演されているらしい。
 人気のある演目なのでコアなファンも大勢いて、パリのオペラ座では去年、参加型のゲームまで開催されたほどだ。
 日本から参加したファンもいて、そのときの様子が動画サイトにupしていた人もいたぐらいだ。
 できることならと思ったが、クイズに答えたり、謎解きというのは正直得意ではなかった、英語もだ。
 それに海外まで一人でというのは不安もあった。


 「アトラクションができるって、どこに」
 「できるじゃなくて海外から来るのよ、オペラ座の中を探検できるんだって」


 眠いと思いながらもパソコンを立ち上げて調べてみた、すると。
 仮設の建物の中にパリのオペラ座を造り、参加者は物語の登場人物になってオペラ座の中を自由に動き、話を作るのだという。
 作るという意味が分からなかった、元々、あれは悲劇だ、歌姫は幼なじみの子爵と恋に落ちて怪人は最後死んでしまう。
 原作では亡くなるが、舞台やゲームでは姿を消して怪人の存在は噂話のようになってしまう。
 


 あなたの行動によってストーリーは進み、変わります。
 ウェブサイトで、その広告を見たのは二週間ほどが過ぎた頃だった。
 チケットは決して安くない、だが、海外に行って舞台を観ることを思えばと思って行くことにした。


 「はあー、こんなにも人気があるとは思わなかった」
 がっくりとなったのはネットでの抽選会にはずれたからだ。
 諦めるしかないだろう、友人に駄目だった、チケット取れなかったわと言うと。
 「当日券は出ないの」
 「んーっ、ネットの掲示板には当日券の事は書いてなかったわ」
 「当日、行ってみたらどうかな、急に用があって行けない人が、チケットを譲りますとか、もしかしたら転売、ダフ屋とかいるんじゃない」
 譲りますね、最近は転売、ダフ屋って高額なことが犯罪に繋がるからって厳しくなってきたから、いないのではと思ってしまった。
 でも、無理だと思っても、そうだチラシだけでもほしいなと思って出かけたのだ、平日の夕方。


 場所はテントではなかったのだろうか、ネットで調べた住所通りなのだが、駅からそれほど離れていない、ビル街なのだ。
 もしかして、住所を間違えただろうか、日も暮れかけて、メガネをかけて周りを見回しても人通りは少ない。
 諦めようかなと思いかけたとき、道に落ちているゴミ、いや、紙に気づいた、気になって手を伸ばしてしまった。
 ファントム・オブ・オペラの文字とゲーム参加の方へと書かれた文字に驚いた。
 だが、開催場所などが書かれていない。
 駄目じゃないと思ってしまった。
 しかし、紙は真っ赤で文字は金色、派手なレイアウト、広告だなあと思いながら、記念に持って帰ろうと歩き出したとき、気配を感じて振り返った。
 そこには怪人そっくりのコスプレをした人物が立っていたのだ。


 この人は案内人だろうか、渡された紙、メッセージボードにはゲームの参加者はついてきてくださいと書かれている。
 だが自分は参加できない、チケット、ノー、持っていないと事を片言の英語と手振り身振りで伝えた。
 すると相手はゆっくりと首を振った。
 鼻から上の部分、顔全体を隠すような白い仮面をつけているのだが、口元が笑っている。
 いいのだろうかと思ったが、相手が先に立って一歩、二歩と歩きだし振り返った。
 この人、怪人になりきっている、そんな事を思いながら足が動いてしまった。
 このとき、立ち止まっていれば、運命は変わらなかっただろう。


 建物に入り、地下へと降りる階段を進むとき不安になってしまった。
 階段がかなりきつい、案内役が降りるようにと手振りで、薄暗い階段を一人で降りて行ったせいかもしれない。
 壁にはライトがついているのだか、明るいというよりは、ほの薄暗いという感じだ。


 この階段は、かなり長いと思いながらどこまで降りればと途中で不安になってしまった。
 戻ろうかと思ったとき。


 il n'y a pas de retour en arrière 後戻りは、できない。


 音ではない、声が聞こえた、気がした。
 いや、気のせいかもしれないと思い、ようやく最後の一段を降りたと思ったとき、足下が。
 地面、体、全て落ちた。


 「ようやく、戻ってきてくれたね」


 男の声だった。


 「始まるんだ、明けない永遠の、私たちの夜が」