好きなモノ、書きたいもの、見たいもの、舞台映画、役者とか

オリジナル、二次の小説 舞台、役者 すきなもの呟いて書きます

男に知らされた事実と目の前の現実 2 (終結)

スマホの連絡はつかない、実家は売却されていたという事実を知ったとき、男は呆然とした、父親は何かの事件に巻き込まれたのではないかと思ってしまう。
 警察に連絡して捜索願を出すかと迷っていると、そんな自分を見かねたのだろう、妻となった女性が知り合いに聞いてみたらどうかしらと呟いた。
 だが、男は不満げな、そんな事は分かっているといわんばかりの表情で妻を見た。


 親族に尋ねた、すると反対に実の息子が知らないのかと呆れたような勘ぐりの言葉で返す言葉さえなかったのだ、そのときの気まずさといったら。
 だが、そんな男の胸中など分かるはずもない、新しい妻は別れた奥さんに聞いてみたらと言った。
 すぐには返事ができなかった、一応は円満離婚という形になっているが正直、今の自分は会いたくないという気持ちだ。
 どうして、嫌なの、不思議そうに聞かれて困ってしまったのは自分の中に後ろめたいという気持ちがあるからだ。
 お互い納得して別れたんでしょうと言われて勿論だと答えた、数日前なら迷いもなく、はっきりとそうだと答えることができたのだ。


 「今日、夕食は外で食べるんでしょう、久しぶりじゃない」
 「ああ、そのことだが、悪い」


 急に人と会わなければいけなくなったんだと告げると妻は不機嫌な顔になった、女じゃないでしょうねと不満を隠そうともしない。


 「浮気、じゃないでしょうね」


 女の言葉に祐二は苦笑いをしながら、弁護士だと答えた、父のことについて話があるらしい、その言葉に驚きの表情で見つかったのと聞いてきた。


 男は答えるかわりに食事はまた今度にしようと呟いたが、いつなのと妻に聞かれても答えることができなかった。



 


 指定された待ち合わせの場所は弁護士の事務所ではないかと思っていたが、自分の会社近くの喫茶店だった。


 簡単な挨拶の後、弁護士と名乗る男は、あなたのお父さんは病気が見つかり、手術の必要があるということでと淡々と話を進めた。
 話を聞いているうちに感じたのは不満と怒りだ、何故、息子である自分に話を、いや、相談もしないのかと驚いた。
 淡々と話を進める弁護士は、そんな男の不満を感じ取ったのかもしれない、費用がかなりかかるようです。


 「保険に入っていたはずですが」


 男は不思議そうに聞いたが、即答で帰ってきたのは解約されたんですよねと言われて男は驚いた。


 「確か、あなたが大学に」


 男は首を振った、自分が父親に金が必要だと頼んだことを思い出したのだ、それも一度ではない。


 「手術は海外で行われます」


 予想もしない言葉だった、海外、すると費用はもしかして息子の自分が出さなければいけないのかと思ってしまった。
 だが、弁護士は、そんな男の胸中など関係なく話を続けた。
 国内では担当できる医師も少なく、設備の関係から、あちらでということになったんです、相手の話を男は、じっと聞いていた。
 唖然とし、頭の中で色々と考えてしまったのは無理もない、手術費用、渡航費、どうするのか、父にそれだけの金があるのか。
 だが、顔に出たのだろう、これを機にと弁護士は言葉を続けた、あなたと縁を切りたいようですと言われて男は驚いた。
 親子の縁を切るということか、どうして、何故といいたげに男は弁護士は男の顔を見た、手術が終われば療養、そのまま、あちらでしばらくは過ごす琴になるでしょう。
 何を言われているのか、男にはさっぱり、意味がわからなかった。


 すると、貴方の元、奥様ですと弁護士はにっこりと笑った。


 「近状を知って入院から手術の手配、費用まで」
 「別れた元、そんな彼女は専業主婦で」


 意外だといいたげに少し驚いた顔で弁護士は男を見た。


 「彼女の親族関係をご存知ではないのですか」


 淡々とした口調、その言葉を遮るように男は突然、拳で机を叩いた、苛立ち、怒り、いや、別れた関係のなくなった元、妻だった女の現状の話が信じられなかったからだ。
 ただの専業主婦だと思っていた彼女が日本、いゆ、世界でもいわゆる資産家の一族だなんて信じられなかった。
  
 「関係ないことですよ、離婚されたのですから、それよりもご忠告を一つ、貴方の現在の奥様ですが」


 自分が愛した浮気相手の話、何故、ここでと思ってしまった。


 「あなたの現在の奥様ですが」


 室内はクーラーが効いていて涼しいはずなのに何故か男は熱く、いや、暑く、汗を掻いている自分に驚いた。


 「最近になって分かったんです、いずれあなたも警察から話を聞かれると思いますが」


 詐欺師、横領、それも有名な、信じられなかった、だが、言葉が出ない、ただ、聞いていることしかできない。


 自宅へ戻ると家の中は空っぽだった。
 家具も何もかもなくなった部屋を見て男は呆然とした。
 拳を振り上げて殴りたい衝動に駆られた、だが、沸いてくる怒りの感情、喪失感も全てを自分で飲み込む事しかできない。
 ただ、男は立ち尽くしていた。