好きなモノ、書きたいもの、見たいもの、舞台映画、役者とか

オリジナル、二次の小説 舞台、役者 すきなもの呟いて書きます

パンダ、ここは逃げると決めたようです、スカー、登場

こいつ、只者じゃない、間に立ちはだかるように立つと男は不思議そうな顔をした、だが。
 「おまえ、呪霊じやない、いや、呪骸f?」
 相手は、そう言ってにやりと笑った、それは下卑た笑いだ、普通のおっさんのではない、企んでいるといわんばかりだ。
 パンダは両手を構え、同時に俊足で距離を詰めると顔面に、腹に、パンチを叩き込もうとした。
 だが、寸前でパンチは空ぶった、いや、外した、男が避けようとはしないのを察したからだ。
 相手が呪詛師ともなるとどんな力を持っているか分からない。
 思いだしたのは、ここに来る前の事件だ、ニュースでは公にはされなかったが、殺されたのは呪術師だ、そして犯人は捕まっていない。
 警察は通りすがりの行きずりの犯行などと言っていたが、呪詛師の可能性があると、そのことを思いだした。
 どんな力を持っているか分からない、もしパンチを食らわした瞬間、同時に反撃され、ダメージを受けたら、うまく避けられたらいい。
 だが、どんな相手だろうと、外見で判断するのはよくない、それが呪詛師相手なら尚更だ。
 もし、ここに呪術高専の、味方が一人でもいたら自分が反撃を喰らっても大丈夫だという安心感がある。
 だが、今は一人だ、それに木桜美夜、彼女とはぐれてしまったのだ。 ちらりと振り返る、自分の背後にいるのは小柄な初老のおっさんだ。 
 自分は呪がいだ、だが呪術高専の生徒、つまり、一般人を守る立場にある。
 仕方ない、パンダは身体をくるりと反転させるとダッシュで走りだすと手を伸ばして小柄な男の手をぐいっと掴み、ジャンプした。
 ここはひとまず退散、様子見だ。


 パンダ君、どこにいるんだろう。 
 一人、街中をふらふらと歩いていたが、どこに行けば良いのかわからない、もしかしたら、このまま、ずっと会えないままでは。
 ここに来てからどれくらい時間が経ったのかわからない、一口の水さえ口にしていない、空腹も重なればダブルパンチだ。
 すれ違う人は黒髪、金髪、ここは日本じゃない、外国なんだと思ってしまう。
 もしかして、ここは異世界だろうか、丁髷、着物姿の人間がいたら大昔の日本にタイムスリップしたなんてことを思ってしまうのだが、とてもそうは思えない。
 身体も足も疲れてきた、どこかで少し休もう、そして何か食べたい、だが、所持金はない、ゼロだ。
 大人なのに、こんな情けない事ってあるだろうか。
 呪術高専の生徒達に伝えよう、今度から仕事に取りかかるとき、帳が下ろされるときは所持金を持参すること。
 いや、金よりも食べ物、飲み物を持参すること。
 バカ、何考えてるの、遠足じゃないでしょ。
 そんなことを思いながら俯きかけていた顔を上げたときだ。
 白、いや、銀髪の髪が目に入った、男の後ろ姿にはっとする、思わず声をあげて駆け寄ろうとした。
 七海君
 冷静に考えれば、こんなんところにいる筈がないと疑問に思うだろう。 
 だが、このとき、感じたのだ。


 数日前、老婆は街で、その男の姿を見かけた。
 長身で銀髪の男だ、額に傷がある、サングラスをかけていたので目の色はわからない、普通の、只の人間、わからない。
 もしかして、五条家の人間かもしれないと思った瞬間、身体が震えた、ほんの一瞬だが、殺意が芽生えた。
 性別が男で同じ髪の色というだけで、だ。
 あちらでは五条悟の存在に怯えていた、呪詛師の自分は勝手に自由に生きられない、不便だと思ってしまった。
 だが、ここでは、数日前、錬金術師で軍人だという男を。
 ふと思った、あの男も錬金術師かもしれない、それなら。
 老婆は思った、あの男の身内の姿を卸して近づけば、簡単に。
 いや、人のよさそうな、ただの老婆のふりをして近づけば、簡単に殺せるだろう、殺意が芽生えた。
 一度芽生えた、それは簡単には消せるものではない、相手が錬金術師だとしても弱点を見つければいい。
 あの男の身内は、このとき、一人の男の姿が見えた、いや、脳裏に浮かんだ。
 白い髪で肩幅のがっしりとした青年の姿だ。
 青年が口を開いた、その言葉を聞いて老婆は、にやりと口元を歪めた。



 目の前から一人の男性が歩いてくる、同じ髪の色、眼鏡をかけた長身の男だ。
 思わず呼びかけたくなる、その衝動を男は抑えた、我慢したと言ってもない。
 亡くなったのだ、兄は死んだのだ、他人のそら似だと思った。
 だが、近づいてくる男の表情は笑っている。
 「スカー」
 それは紛れもなく兄の声だ、思わず駆け寄ろうとしたとき、身体がずいと引っ張られた。


 「駄目っ」
 女の声にはっとして、男は兄者と予防として顔を向けた、だが、そこに懐かしい顔はない。
 半分は兄、そしてもう半分の顔は老婆の顔だった。