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オリジナル、二次の小説 舞台、役者 すきなもの呟いて書きます

PSYCHO-PASS サイコパス 征陸智己の事情(恋の始まりと予感、色々?)

アニメPSYCHO-PASS サイコパスの二次創作です。
他サイトにもUpしていますが、少し手直ししています。



 一つの事件が終わると正直、ほっとする、だが、それは束の間の休息というもので、また新しい事件が始まる、人が増えすぎたからだといえばそれまでなのかもしれない。
 久しぶりの休日ということもあり、何もしないまま過ごすのももったいないと思って外に出ることにした。


 征陸智己(まさおかともみ)は公園のベンチに腰を下ろして一休みしようと煙草を取り出したが、火をつけようとして、ふと、その手を止めたのは視線を感じたからだ。 
 「こんにちは」
 まさかと思ってしまう、思わず手を伸ばすが、お休みでしょうと笑いを含んだ男の声に思わず顔をしかめた。
 「ご挨拶しようと思いまして」
 日本を離れるんですと背後から近づきながら、ゆっくりと自分の前に立った男は目深に帽子をかぶり、マフラーで口元を隠している。
 「驚かないんですね」
 「死んだとは思っていなかったからな、おまえさんが」
 三年前、突然、現代のジャツク・ザ・リッパーと呼ばれ街を騒がせた殺人者、犯人を追い詰めたが、それは自死という終わりを告げた。
 ところが、死体は身代わりではないかという意見が出てきた。
 感じるところがあったのだろう、もう一度調べた方が良いのではという意見が出たが、何故か、それは通らなかった。
 凶悪な事件が日々、勃発している、切り裂き悪魔などより、残忍で非道い凶悪犯が、もし何かあれば、そのときに対処すればいい。
 憶測で動いて間違いだったときに責任が取れるのかと言われたら下の人間に反論することはできない。
 終わった事件だと言われてしまったら、自分の立場からは意見することはできない、征陸自身、釈然としない気持ちはあったが、納得するしかなかった。
 「また、始めるのか」
 殺すことが楽しいわけではないといっていた、ターゲットに選ぶのは女性ばかりだ。
 腹を刺して、顔をめちゃくちゃに切り裂いた後、死体を人目につく場所に晒すのだ。
 残酷、残虐、夜の外出が怖いと、あの頃は深夜の一人歩きの女性の数は減ったものだ。
 男は軽く首を振り、興味がなくなりました、そう言ったら、どう思います、征陸さん。
 名前を呼ばれて感じたのは違和感だ。
 事件が終わって三年、それが長いのか、そうでないのか、わからない、そんな自分に見せたいものがあるんですといって、帽子を取り、マフラーを外していく、そこに現れた顔を見て言葉を失った。
 「似ていますか」
 誰にだ、その顔は(自分)だ。
 「これなら、愛してくれます、彼女は」
 その言葉に心臓がどくんと跳ねた、感情が出たのだろう。
 そこには、自分にそっくりな顔があったからだ、それだけではない、見てくださいといわんばかりに手まで、義手だ。
 征陸智己という、もう一人の人間が目の前にいた。


 あの日のことを
 週末だというのに駅、構内の人はそれほどではない、珍しいなと思いながら征陸は改札を通り、ホームへと向かった。
 ホームに上がる階段は最近ではエスカレーターに変わってしまうことが多いが多いが、早く帰らなければいけないという理由はない。
 一人暮らしだと、何故か、わざと遠回りして時間をかけてしまうのは自分でも不思議だった。
 ホームに上がる階段を上ろうとしたとき、ふと目についたのは買い物袋を下げて手すりを持ち、一段ずつ、ゆっくりと上っている女性の後ろ姿だ。
 歩き方が、どこか心許なく、足、いや、膝が悪いのかと思ってしまった、下げている買い物袋も重そうだ。
 あと少しというときだ、あっと小さな声が上がった。
 「大丈夫か、あんた」
 ぐらりと揺れた体を慌てて抱きとめた。



 「送りますよ、征陸さん」
 「いや、電車で帰る」
 遠慮しないでくださいよと言われたが、あえて断ったのは事件の全貌がなかなか見えてこないからだ。
 色々と考えたいことがあるんだ、その言葉に相手は小さく頷いた、今回の事件、犯人はなかなか尻尾を掴ませない、グループの犯行かと思われたが単独ではという意見もあり、捜査に当たる刑事たちも困惑を隠せないでいた。


 一人になって考えたいと言ったが、こういうとき、電車は便利だ、様々な人がいて、観察しているだけでも気が紛れるというか、ヒントを貰える、そんな気がするのだ。


 駅のホームに出ると平日なのに人はそこそこだ、時間帯のせいなのかもしれない。
 ふと視線を感じた、見られていると思い気づかれないように、そちらへと体をわずかに動かして視線を盗み見するように送る、気づいたのはホームの椅子に座っている女性の姿だ。
 もしかしてと思い、顔をわずかにそちらに向けると女も気づいたようだ。
 笑っているような気がした、(もしかして、自分に)。
 そう思うとわざと気づかないふりをしてというのはどうも居心地が悪い。


 「この間はありがとうございました」
 近づくと、女はにっこりと笑った。
 「コート姿に、もしかしてと思ったんです、人違いだったらどうしようと思ったんですけど」
 「んっ、もしかして」
 「あたし、視力、悪いんです」
 「俺も老眼だよ」
 互いに顔を見合わせて笑ってしまう、先ほどまで事件のことを考えていた征陸は時計を見て少し真面目な顔になった。


 「仕事の帰りかい、あまり遅くなると家族が心配するんじゃないかい」
 「大丈夫、あたし、一人暮らしなんです、でも、最近、色々と事件、ありますよね、ストーカーとか」
 「そうか」
 頷きながら少し考え込むような表情の後、征陸は時計を見た。
「特別サービスだ」
 自分は警察の人間だと手帳を見せ、送ろうと言葉を続けた。


 電車を降り、駅を出て歩き出す途中、征陸は視線を感じた、もしかしてと思った。
 最初は刑事である自分をと思った、だが。
 アパートの前まで送り届けた後、確信した、彼女を尾行していたのだと。  
 


 数日後。
 「何かありましたか、おやっさん」
 「んっっ、何がだ」
 顔、怖いですよと言われて征陸は窓の外を見た。
 「降りそうだな」
 「そうですね」
 車で移動中、会話をする気にならないのは犯人らしき人間を見かけたという通報があったからだ。
 しかし、犯人の手がかりらしきものは見つからなかった。


 「おいっ」
 突然、声を上げた征陸の声に運転していた縢(かがり)は驚いた。
 「ど、どうしたんです」
 車が止まると同時に征陸はドアを開けて飛び出すように外に出た。
 歩道に向かって急いでいるのがわかる、その時には縢の視線が一瞬、釘付けになった。
 (誰、えっっ、どういう)
 女性に向かって征陸が駆け寄っていくのだ。
 警察関係、いや、そうは見えない?、もっとよくと思ったが、車を停車させたまま、というわけにはいかない。
 翌日、征陸は縢から質問攻めにあったのはいうまでもない。