好きなモノ、書きたいもの、見たいもの、舞台映画、役者とか

オリジナル、二次の小説 舞台、役者 すきなもの呟いて書きます

生き返った女

 久しぶりに書いた二次創作です。
 今回書いていて途中でだれてしまい、次回からは続き物、クロスオーバーを書くときは設定、シリーズ化にしてアップしようと思いました。



 眩しいのと、両手が熱いと思った、それは長くは続かなかった。
 自分に何が起こったのか、マルコーは分からなかった、手の甲の錬成陣が目の前に大きく浮かび上がると同時に青白く光る。
 それは、瞬きをするほどの一瞬の事だったように思えた。
 だが、その光が消えた後、部屋の中は自分たちだけだった。
 いや、正確には鬼と異形の存在だけが消えていたのだ。
 だが、それだけではない、部屋の中を埋め尽くすように伸びていた植物は少しずつ萎れていく。
 そして最後には砂のようにさらさらと音をたてて、消えてしまった。 残された者は呆けたように部屋の中を見ていたが>
 このとき、何かに気づいたようにマルコーは我に返り、ベッドに近寄った。


 一週間あまりが過ぎた、何事もなかったかのように過ぎていく日常は鬼という存在が、このセントラルに現れたということでさえ夢ではなかったのかと思ってしまう、だが、現実だ。
 ベッドの中で寝ている人間、刀剣という存在、そして人ではない異形の存在は存在。
 何かの異変が起こる前触なのだろうかと思ったが、何も起こらないことに安堵しながらも、わずかに不安を感じてしまう。


 ホムンクルスを作造った金髪の男は自分のベッドに寝かされた人間の姿を見下ろしながら呼びかけた。
 生きているのかと。
 だが、見動きひとつせず、返事もない、奇妙な文字の書かれた布はぴたりと顔に張り付いたままだ。
 死んではいない、だが、いつまで、この状態が続くのかと思ってしまう。
 永遠に、このまま生き続けるなどということはあり得ない。
 一ヶ月近くになる、その日、ベッドの周りに生えていた緑色の蔦、植物が枯れ始めた、それだけではない。
 衣服が、そこだけ時間が過ぎるように変わりはじめたのだ。
 このままでは肉体も朽ちてしまうのではないか。


 「賢者の石を使ってみてはどうだろうか」
 マルコー言葉に金髪の男は大丈夫なのかと尋ねた、普段、感情を表に出さない、なのに、その声は揺れているようだ。
 このまま、何もせずにいたらとマルコーが呟くと、石の中に閉じ込める事はできないかと男が言った。
 細胞だけでなく、周りの時間までも止めてしまえば、その間に方法が見つかるかもしれない。
 何故、このときマルコーは不思議そうに男の顔を見た。
 暇さえあれば、男は部屋から出ることもなく、ベッドのそばにいる。 
 生きている人が死ぬ、寿命なら仕方ないと諦めもつくが、そうではないのだ。
 自分が医者だから生きてほしいと願うのだろうか。
 じっと見下ろしていると、文字が揺れた。
 えっっ、布に書かれた字が、見間違いかと思ったマルコーは思わず手を伸ばそうとした。


 小さな音、いや、声が聞こえたような気がしたのだ。


 枯れ枝のように細い腕がゆっくりと動き、伸びてくるとマルコーの手首を掴んだ、驚いたが、振り払う事ができない。
 「き、はな、いい、に、おい」
 たどたどしい小さな声が少しずつ、大きくなり、同時に顔覆っていた布がふわりと揺れ、風に吹かれた。
 されるがままに、マルコーの手が女の頬を撫でた。
 かすかな声と息が手に触れて驚いたマルコーに、女が微笑んだ。
 「ありがとう」