雑多な日々は徒然に

オリジナル、二次の小説 舞台、役者 好きなものを呟いて書きます

「クズ夫とその愛人にざまぁを。  虐げられた妻の選んだ相手は義父でした」の抜粋です。

木桜

6 「平穏な日常」の抜粋シーンです。



里奈は受け取った箱をそっと開けると、ふわりと甘い香りが広がる。

「苺のショート、アップルパイ、美味しそう」

声だけでなく顔も破顔していた。表情だけでわかる。

「正幸さんは、莓と林檎、どちらが好きですか?」

「いや、俺はいい」

遠慮しようとした、だが。

「半分ずつにしましょう。美味しさ、二倍になりますよ」

その一言に返す言葉を失った。

誰かとケーキを半分こする――。

そんなこと、いつ以来だろう。

思い返そうとしても、記憶のどこにも引っかからない。

甘いものを誰かと分け合って食べるなんて久しぶりだと思った。

珈琲を淹れ、テーブルの向かいでフォークを手にする。

ただそれだけのことなのに、妙に胸のあたりがそわそわする。

なんだか、照れくさいなと思わず心の中で苦笑した。



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